2026年、北海道観光の軸が蠢く——「西・小樽」沿線に押し寄せる人波と、変わりゆく街のリアル
西 や 小樽の沿線が、いま静かに、しかし決定的な熱気に包まれている。2026年春、北海道の観光地図は従来の定番ルートから明らかな地殻変動を起こし始めた。大都市・札幌の喧騒をすり抜け、あるいはその西側のエリアや港町小樽へと直接足を伸ばす旅人たちが急増している。何が彼らを惹きつけ、現地では何が起きているのか。現地を歩いた。
朝一番の函館本線に乗り込むと、車内はバックパックを背負った旅行者と地元高校生が肩を寄せ合っていた。車窓を流れる日本海の荒波を眺めながら、人々はスマホのマップを指差している。かつてのような金太郎飴的な観光バスツアーではなく、自らの足で西 や 小樽の路地裏を探訪する個人旅行者が目立つのだ。この潮目の変化は、単なる一時のブームにとどまらない深みを見せ始めている。
観光の常識が変わる? 札幌オーバーツーリズム回避策が生んだ「西側」への大波

「半年前とは客層がまるで違う」。小樽駅近くで長年喫茶店を営む70代の男性は、淹れたてのコーヒーをカップに注ぎながらそう呟いた。以前は団体客がバスで運ばれてきては運河前で写真を撮り、数時間で去っていくのがお決まりだった。今は違う。若い世代や海外からの個人客が、地図にも載っていないような裏通りの古民家や、手宮地区の坂道へと吸い込まれていく。
背景には札幌市内の混雑激化がある。宿泊費の高騰や主要観光地のキャパシティ超過を嫌気した旅行者たちが、代替地として札幌の西エリアや小樽方面に目を向け始めた。アクセス面でも、快速電車の増便や二次交通のオンデマンド化が進み、移動のハードルが劇的に下がったことが追い風になっている。
新幹線延伸を見据えた再開発と、消えゆく昭和の景色
2026年の現在、北海道新幹線の札幌延伸に向けた工事は佳境を迎えている。小樽駅周辺や周辺の接続道路では、日々大型重機がエンジン音を響かせている。新しいホテルや商業施設の建設ラッシュが続く一方で、街の歴史を支えてきた老舗の撤退や建物の解体も目立つ。
「きれいになるのは嬉しいけれど、どこか寂しいね」。生まれも育ちも小樽だという80代の女性は、工事現場の仮囲いを見上げて小さくため息をついた。明治・大正期に建てられた石造り倉庫や昭和初期の木造アパートが、最新の耐震基準や再開発の波に飲み込まれていく。開発のスピードと歴史的景観の保全。その危ういバランスの均衡をどう保つのか、自治体も苦しい判断を迫られている。
ウニ・寿司だけじゃない:若手シェフと生産者が仕掛ける「ローカルガストロノミー」

食の現場でも新しい変化が起きている。かつて「小樽=海鮮丼・寿司」という固定概念が強かったが、近頃は北海道西部の豊富な食材を取り入れたイノベーティブなレストランやビストロが続々と開店している。
余市や仁木で収穫されたワイン用ブドウ、古平で水揚げされた新鮮な魚介、そして近郊のファームから届くオーガニック野菜。これらを一皿に昇華させる若手シェフたちが、全国から集まりつつある。「ここでしか味わえないストーリーを提出したい」。そう語るシェフの皿には、従来の観光料理にはない洗練と力強さが共存していた。食通たちがわざわざ足を運ぶ理由がここにある。
リノベーションが変える空き家:若者とクリエイターが集う新たな拠点
高台に位置する古い住宅街を歩くと、ペンキ塗りたての看板を掲げたアトリエやゲストハウスが目に入る。人口減少と高齢化に伴い放置されていた空き家が、若い移住者たちの手によって生まれ変わっているのだ。
都内から移住してきた30代の陶芸家カップルは、築60年の民家を自力で改修し、ギャラリー兼ショップを開いた。「冬の寒さは想像以上だったけれど、窓から見える海と空のグラデーションは何物にも代えがたい」。彼らのように、都市の喧騒を離れてモノづくりに没頭できる環境を求めて移住してくるクリエイターは途切れない。点であった拠点が面となり、かつての静けさを取り戻した街に新しいコミュニティの息吹をもたらしている。
冬だけじゃない。オールシーズン型リゾートへ舵を切る道西エリアの挑戦
北海道の冬といえばスキーリゾートだが、夏から秋にかけてのアウトドアアクティビティへの投資が加速している。積丹半島の絶景を巡るシーカヤックツアーや、西側の山々を走るトレイルランニングイベント、さらには歴史的建造物を舞台にしたナイトマーケットなど、季節を問わず楽しめる仕掛けが充実してきた。
「ニセコのような超高級路線とは一線を画し、地域に根ざした日常の延長にある上質な体験を提供したい」。観光協会の担当者は力強く語る。通年での集客が可能になれば、観光業界最大の課題である季節ごとの雇用変動も平準化される。持続可能な観光地への脱皮に向けた試みが、着々と実を結びつつある。
急増する訪日客と地元の暮らし:共存に向けた現場の課題と展望
もちろん、課題がすべて解決されたわけではない。ゴミの放置や私有地への無断立ち入り、マナー違反といったオーバーツーリズムの影響は、生活道路にまで及んでいる。朝の通勤・通学時間帯におけるバスや電車の混雑は、住民の不満の種だ。
「観光客が増えるのは経済的にありがたいが、住みにくくなっては本末転倒だ」。ある町内会長は複雑な表情を見せる。自治体では、多言語でのマナー啓発看板の設置や、混雑状況をリアルタイムで配信するスマート観光システムの導入を進めている。新時代を迎えたこの地域が、観光と暮らしの幸福な共存関係を築けるかどうかが、今まさに試されている。 (出典: 西 や 小樽(Yahoo!ニュース))